大阪市で耐震設計をするときに利用できる補助金制度として、「民間戸建て住宅等の耐震診断・改修等補助制度」が使えます。

 耐震リフォームを行う場合は耐震診断を一度行い、耐震補強設計が必ず必要となります。

 耐震診断費用はどこに依頼しても金額の差はありませんが、設計費からは数万円から数十万円の差が出て、補助金を利用しても自己負担金額が大きくなりますので、しっかりと業者を選ぶようにしてください。

補助金対象者・住宅

 耐震診断を行った結果、家の評点が0.7未満(倒壊する可能性が高い)、もしくは1.0未満(倒壊する可能性がある)と診断された家、かつ、以下のいづれかの補強工事を行う設計がされたものに補助金が出ます。

・評点が1.0未満の家を、1.0以上にする補強設計

・評点が0.7未満の家を、0.7以上にする補強設計

・1階の耐震診断の評点が1.0未満の家を、1階のみ1.0以上にする補強設計

・評点が1.0未満の家に、認定されている耐震シェルターを設置する工事

 その他の補助金の基本条件は耐震診断時の条件と同様ですので、そちらを参照してください。

大阪市の耐震診断補助金

補助金額

戸建て:10万円

長屋・共同住宅:18万円/1棟

耐震補強設計の目指すべき評点

 耐震診断を行うと、大概の家は非常に悪い評点となります。

 住宅の評点は昭和56年5月31日以前の建物(以下、旧耐震の家)であれば、8割程度の家が0.7未満(倒壊する可能性が高い)、1割程度が1.0未満(倒壊する可能性がある)という結果となります。

 また、平成12年5月31日以前の新耐震基準の建物(以下、新耐震の家)であっても、6割程度の家が0.7未満、2割程度が1.0未満という結果が出てきます。

では0.7未満の住宅を以下①~④のどの補強を目指すべきか。

①0.7以上にする補強工事

②1、2階を1.0以上にする補強工事

③1階のみ1.0以上にする補強工事

④耐震シェルターを設置する工事

 設計士によって考え方は異なりますが、当社の考えでは②→③→④(①)→①(④)、コストを抑えるなら③→①(④)→④(①)→②となります。

①0.7以上にする補強工事

安心度:(不)★★☆☆☆(安)

 評点を0.7以上に上げる補強設計はあくまでも“一時的な措置”です。0.7以上にしたからと言っても、評価としては「“倒壊する”可能性がある」です。しかし、補強していない旧耐震基準の家は震度6強の地震で約40%以下の家が全壊するという予測もありますので、言うまでもなく補強していないより家よりは断然に良いのです。

コストパフォーマンス:(悪)★★☆☆☆(良)

 建坪25坪程度の家であれば「建物の軽量化」と「1階の壁補強5~8カ所程度」、「2階の壁補強2か所程度」で0.7はクリアします。屋根が軽い材料で葺き替えている家は室内の補強だけで済みます。

 耐震補強工事費用は私の経験上、最小限で約150万円程、リフォーム工事を含めると平均で300万円程、キッチン等の設備取替も同時に行うと500万円程度は必要となります。

補強難易度:(難)★★★★☆(易)

 評点を0.7以上にする設計は比較的簡単です。現状ある壁を増やすことなく、現状の位置のまま強くするだけで0.7以上になるケースがほとんどです。

②1、2階を1.0以上にする補強

安心度:(不)★★★★★(安)

 評点1.0が国の基準で、新築でも最低求められている強さとなります。1階も2階も新築並みに補強すれば安心感はあります。

コストパフォーマンス:(悪)★★★☆☆(良)

 建坪25坪程度の家であれば「建物の軽量化」と「1階の壁補強6~10カ所程度」、「2階の壁補強4か所程度」で1.0はクリアします。

 耐震補強工事費用は「窓を塞いで新しく壁を作る」「基礎を新設して壁を新設する」工事が必要となる場合も多いので一概には言えませんが、私の経験上、評点を0.7以上にする工事に30万円~100万円程度追加するだけとなります(リフォーム範囲によって異なります)。

補強難易度:(難)★★☆☆☆(易)

 評点を1.0以上にしようと思うと、現状ある壁を補強するだけでは補強設計が不十分な場合が多くあります。そのような場合は窓を塞いで耐震壁にしたり、基礎を新設して新たに補強壁を作るという設計となります。

 また、間口(横幅)が狭い家は壁の配置バランスの問題で1.0以上にすることが出来ない事もあります。

③1階のみ1.0以上にする補強

安心度:(不)★★★★☆(安)

 地震が来た時の家の壊れ方は「1階が倒れて2階が残る」、「1階が倒れた衝撃で2階も倒れる」が多いのです。2階の評点としては0.5や0.6程度ある家が多いため、1階2階の評点を0.7以上にするのであれば、1階だけでも1.0以上にしておいた方が安心なのです。ただし、こちらも「一時的な措置」であり、“2階が先に倒壊する危険性”もあります。

コストパフォーマンス:(悪)★★★★★(良)

 1階2階ともに評点1.0以上に補強する場合に比べると、2階の補強が基本的に必要ありませんので、その分コストは抑えられます。ただし、家の角の柱が通し柱でない場合は、1階2階の柱をしっかりと接合金物を取り付ける為に、一部解体することもあります。

補強難易度:(難)★★☆☆☆(易)

難易度は1、2階を補強する場合と同様です。

④耐震シェルターの設置

安心度:(不)★★★★★(安)

 寝室、居間などの一室だけ、または押入れ内部だけでも地震が来ても安心な鉄でできていたら安心です。

コストパフォーマンス:(悪)★★★★☆(良)

 シェルターの大きさや種類などによりますが、100~150万円程度と非常に安価となります。部屋の中に“箱をつくるわけですから少々部屋が狭くなりますが、それでもコストパフォーマンスが高いですね。

 ただし、耐震シェルターのデメリットとしては震度6弱(震度5.5~震度5.9)の地震が来ると立てなくなりますので、シェルターに避難する前に家が倒壊するというリスクがあります

 また、押入れの下段をシェルターにしたり、テーブルやベッドをシェルターにした商品もあり、「三角スペース(生存空間)」を確保するのに効果的です。

 大阪であれば株式会社安信さん(当社安信計画(株)とは関係ありません…)が豊富な種類のシェルターを取り扱っています。

株式会社安信

補強難易度:(難)★★★★(易

 シェルターの設置に設計はありません。どの空間をシェルターとするか、それだけ考えればいいだけです。

耐震補強設計の注意点

 耐震補強設計においては設計者の考え方によって補強内容が異なります。壁の補強を優先する設計、家の重量を軽くする設計、劣化を最優先で修繕する設計、壁の配置バランスを最優先する設計、基礎の補強を優先する設計…など多数の設計ポイントがあります。

 耐震診断を行った業者が耐震補強設計を行いますので、耐震診断を依頼する際に「設計費はいくらか」「どのような補強を優先しているのか」などを事前に確認し、設計内容に納得のいく業者に耐震診断からお願いしてください

 補助金は一度切りしか利用できないので、設計から別の設計士にしてもらうと再度診断費用がかかったり無駄な費用が発生してしまうので、初めの段階で補助金や診断、設計、工事のことについて確認しましょう。

 また、「20万円30万円で耐震補強ができる!」等という情報もあります。確かに耐震補強はできますが、家の評点はほとんど上がりませんし、補助金も出ません。0.3の家であれば0.34に上がる程度で、家全体を補強する工事とは全く別物の補強となりますのでご注意ください。

補助金目当てのリフォーム会社には要注意

 耐震補強設計にも補助金がでますが、「補助金を使って屋根を葺き替え」「補助金を使って室内リフォーム」と補助金情報を前面に出してリフォームを行う業者もいます。

 中には耐震補強設計、工事などのノウハウの無い業者や、でたらめな耐震診断・補強設計を行う建築士もいます。

 「補助金を使って耐震診断無料」などには釣られずに、しっかりとした考えとノウハウのある業者に依頼するようにしてください。

 補助金を使えばリフォームも安く感じますが、本当に必要な部位のみ工事するように心がけてくださいね。


まとめ

  • 評点を0.7以上にする設計でも補助金は出るが、あくまでも「倒壊する可能性がある」レベル
  • 耐震補強設計は1.0をまず目指し、不可能であれば0.7を目指す
  • シェルターは安価で工期も早い。補助金もでる。しかし、逃げ込む前に家が倒壊する可能性もある。
  • 耐震診断の段階で設計費、設計者の考え方を聞いておく
  • 30万円、70万円程度の工事では評点0.7以上にする耐震補強すらできない。
  • 補助金目的の業者、補助金を前面に出してくるリフォーム業者には要注意