耐震リフォーム工事の優先順位は?耐震リフォーム工事は単に筋交い(斜めに入っている木材)などを入れて補強すればいいというものではありません。耐震補強にも地震に対して強い家にする為には優先順位があります。

 この優先順位は設計士それぞれの考え方によって異なりますので、あくまでも当事務所の考えで説明していきます。

あなたのお悩み
  1. 壁を補強すればいいだけじゃないの?
  2. 他に地震に強い家にする方法はあるの?
  3. 地震に強い家にするためには何からすればいいの?優先順位は?

優先順位1:家の軽量化

 耐震リフォーム工事の優先順位は?まず当事務所が最優先に提案させていただいているのが「家の軽量化」です。単純に屋根を軽い材料に変えるだけで評点(家が持っている力)は上がります。

 頭が重たい建物は、それを支える大きな力が必要となります。皆さまも20kgのお米を頭の上に乗せて、横から誰かに押された場合、何も持っていない状態よりも足で踏ん張る力は大きくなるはずです。これと同じ考えです。

 屋根の軽量化をしないまま足元(壁)だけを強くしても、あまり評点は上がりません。S59.5.31以前の建物であれば国の基準である評点1.0(一応倒壊しないレベル)には達することは困難となります

ワンポイントレッスン☆悪徳業者は建物の重さを誤魔化す

家の重さは3段階に分かれており、「非常に重たい建物」「重たい建物」「軽い建物」と分類されます。

 大雑把に説明すると、屋根に瓦と土が乗っている昔の工法で葺かれた屋根の家は「非常に重たい建物」に分類されます。

 屋根の土を撤去し、桟葺き(土ではなく木材を横に固定して、それに瓦をとめる、ひっかける)であれば「重たい建物」に分類されます。

 屋根に乗っている土を撤去し、更に瓦を軽いものに替える(スレート瓦やガルバリウム鋼板など)と「軽い建物」になります。

 ここで注意したいのが、建物の重さは“屋根の重さ”だけでは判定できません。外壁や室内の壁の材料によっても建物の重量が変わってきますので、壁が「土壁」である場合、屋根を軽量化しても「重たい建物」として計算をします。これを「軽い建物」として計算してしまうと、危険側の耐震補強設計となってしまいます。

 耐震補強に慣れていない詐欺的な会社は、ここをよく危険側の設計にします。

 松原市のとある耐震診断を受けたお客様の話になりますが、現状の屋根が「土葺きの瓦屋根」で、その設計事務所曰く「屋根を軽量化すれば評点が国の基準を超えるので補助金がおりる」とのことでした。まず、平成12年5月31日以前の建物であっても屋根を軽量化するだけで評点が1.0を超えるこという住宅は少ないのです。ましてや昭和59年5月31日以前の建物はとうてい国の基準には届きません。

 その設計事務所名義の屋根葺き替え見積もりもありましたので、恐らく屋根の工事を受注したいだけだったのでしょう。

 「屋根を葺き替えるだけで耐震補強の補助金が下りる」ということは、まずあり得ませんので、この「建物の重さ」に関しては特にご注意ください。

ここがポイント

  • 「建物の重さ=屋根の重さ」ではない。
  • 悪徳業者は「軽い建物」として計算し、工事費を安く見せる

優先順位2:耐力壁の新設と配置バランス

 耐震リフォーム工事の優先順位は?屋根の軽量化だけではまだまだ地震に耐えられる家にはなりません。S56年5月31日以前の建物であれば、必ず室内の壁の補強が必要となります。

新耐震基準であるS56年6月以降の建物は安全という認識が一般的にありますが、S56年6月以降の建物の殆どは耐力壁の増設が必要です。

 S56年5月31日以前の建物は大体一般的な大きさの家(建坪15~20坪程度)であれば、壁を1階は10カ所程度以上、2階は4カ所程度以上は補強が必要です。

 H56年6月~H12年5月31日以前の建物であれば1階は5カ所程度以上、2階は2か所程度以上は必要です。

屋根の次に優先順位として高いのが耐力壁の設置であり、耐力壁を新設しない限り地震に耐えられる家にすることはできません。

新耐震基準の建物はバランスが悪い

 なぜ新耐震基準で建てられたH56年6月~H12年5月31日の建物は補強が必要なのか…それは壁の「配置バランス」が良くないからです。新耐震基準では耐力壁の“量”は定められましたが、“バランス”はこの時に定められていません。

 南側に窓などの開口が多く北側に壁が多い家は、地震で揺れると北側の壁だけが踏ん張ってしまって南側は揺さぶられる状態になります。つまり家が“ねじれる”わけです。家がねじれると筋交いが入っていたとしても力を発揮できませんし、揺れも大きくなり、結果的に倒壊してしまいます。ですので、新耐震基準だから安心というわけではなく、バランスを整えてあげるという意味で補強が必要なのです。

 耐震リフォームでは耐力壁の設置と共に壁の配置バランスを考えて、家がねじれないように設計する必要があります。ただし!同時に床を強くしないと力がスムーズに流れませんので、よのような「床剛性」も一緒に考える必要があります。

建物の軽量化の次に高い優先順位としては耐力壁の新設、壁の配置バランス、床剛性を一緒に上げるということになります。

勿論、金物の取り付け補強もお忘れなく。

ここがポイント

  • 屋根の軽量化だけでは耐震性はまだ不十分
  • 新耐震基準の建物もバランスが悪いので、補強が必要
  • 壁の補強は1階が多くなり、2階は数か所の補強で可能

優先順位3:家の劣化を直す

耐震リフォーム工事の優先順位は? 屋根の軽量化、そして耐力壁の新設、増設と同等に大切なのが「劣化修繕」です。シロアリ被害にあっていたり、雨漏りや湿気などで土台や柱が腐食している場合は、そこが弱点となり倒壊するリスクが高くなりますので、腐食している場合は積極的に直すようにしてください。

 雨樋が傷んでいる、ブリキの庇が錆びているなどといったことは、家の構造上問題ありませんのでご安心ください(そこから雨漏りしている場合は除きますが…)。

 外壁から入った雨で梁が腐食しているとなれば…残念ながらどうしようもありません。柱であれば抜き替えは可能ですが、梁の抜き替えとなると非常に厄介になります。技術的には梁の架け替えも可能ですが、費用が掛かり過ぎてしまいます。そのような場合は補強梁を入れて補強することも可能です。

 劣化があると地震はそこを狙って倒壊させようとしてくるので、「シロアリ」「雨漏り」「腐食」だけは必ず発生させないようにメンテナンスしてください。

 また、話が逸れますが、和室から洋室に変更する工事もよくされますが、和室の廻り縁や長押を撤去した後の柱の補修をしっかりとしてもらってください。実は和室の廻り縁や長押は柱を2~3cm切って取り付けていますので、一部柱が細くなっています。和室続きの部屋であれば柱の断面が「こけしの首」みたいに細くなっていますので、地震に狙われやすいです。リフォームをされる方は必ず埋め木をするなどの補修をしてもらってください。

ここがポイント

  • 土台・柱などの腐食、腐朽などの劣化は可能な限り直す
  • とにかく柱などの木材を濡らさないこと!雨漏りには要注意!
  • 和室続きの柱も弱点となるので補強の優先順位は高い!

優先順位4:基礎の補強

 耐震リフォーム工事の優先順位は?基礎も耐震補強工事には大切なのですが、費用の問題からして優先順位は最後となります。勿論設計士によっては「基礎が一番大切だ」という方や「劣化改善が最優先だ」という設計士もいます。あくまでも当事務所の考えです。

 基礎の補強は、無筋コンクリート基礎から鉄筋コンクリート基礎に変えるという考え方です。「基礎を全部壊してつくりかえないといけないの!?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。

 既存の基礎の横に新たに鉄筋コンクリート基礎を新設して緊結させる方法もありますが、費用が掛かり過ぎてしまいます。ですのでアラミド繊維シートなどを現状の基礎の側面に張っていく工事が一般的です。このアラミド繊維は鉄の5倍の引張強度がありますので、簡単に鉄筋コンクリート以上の強度まで補強することができます。こちらも費用的には屋根の葺き替え工事くらい必要ですので、予算にゆとりがあればしてもいいかもしれません。

 「無筋コンクリート基礎でも大丈夫?」と聞かれると…大丈夫です。勿論クラック(ひび割れ)があれば補修の優先順位は高く、エポキシ樹脂を流し込んで補強は必要です。健全な基礎であれば問題はありません。

 ちなみに、壁を補強すると、柱が引き抜けるような力が働きます。柱の引き抜き力が土台にかかり、土台と基礎を緊結しているアンカーボルトを通して基礎まで力が加わります。ですので補強する壁をあまりにも強くしすぎと基礎に負担がかかりすぎて、基礎が破壊する恐れがありますので、柱にかかる引き抜き力もしっかりと設計段階で考えておく必要があります

ここがポイント

  • 基礎の補強は費用が掛かるから後回し
  • 基礎の補強をするなら、アラミド繊維シートや炭素繊維シートを張り付けるのが最も安価で強度がでる
  • 無筋基礎である場合、壁の補強は慎重に計算しないと基礎が壊れる

優先順位5:地盤改良

 耐震リフォーム工事の優先順位は?これを読んでいただいている方は谷を埋め立てた造成地や、かつては水田、沼だったところ、また「液状化」など地盤に関する不安も少なからずあると思います。

 まず気になるのが費用の問題。家が建っていう状態で地盤改良なんでできるのかと疑問に思いますが、意外とできるのです。

 硬質ウレタンを注入する方法が最も安価ですが500万円~800万円はかかります…効果はあるのでしょうけど、費用の問題で優先順位としては最後になります。

 耐震補強で例えばリフォームを合わせて800万円かけて、地盤改良で600万円かかるといった場合は…新築に建て替えましょう!流石に今まで地盤改良をしたいという方に出会ったことはありませんが、本当に高いですね、地盤を工事しようと思うと。

 ただし、地盤改良をしたからといって大丈夫かと言われると、不安は残ります。液状化も表層1mや2m付近で発生するという訳でもなく、更に下の層が液状化することもあるのです。表層改良や数mの杭を打ち込んでいたとしても、その杭の下が液状化すると効果がありません。

 効果があるかどうかわからない工事に数百万円かけるのであれば、もはや迷わずベンツでも買いますよね。

もう少しお手頃価格でできるようになれば普及するかもしれませんね。

ここがポイント

  • 地盤改良の優先順位は最後
  • 建物を補強して地盤改良するくらいなら新築を立てたほうがまし

まとめ
  1. 耐震補強の優先順位は屋根→室内壁補強・バランス整える→劣化改善→基礎補強の順で
  2. 屋根を軽くしただけでは「軽い建物」にはならない。騙されないように注意。
  3. S56年6月1日~H12年5月31日の新耐震基準の建物でも安全ではない。壁のバランスを整える必要がある。
  4. 劣化はシロアリ、雨漏り、木材の腐食には要注意、要メンテナンス
  5. 劣化がある場合は積極的に直した方がいい
  6. 基礎は費用がかかるので優先順位は最後。基礎に負担がかかりにくい設計を心がける。